2025年12月16日
NTT株式会社
愛知県がんセンター
本日、NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)と愛知県がんセンター(所在地:愛知県名古屋市、病院長:山本 一仁)は、臨床試験DXを共同で推進する取り組みを開始します。
この取り組みは、がん治療におけるドラッグラグ・ロス※1の解消と地域医療への貢献を目的としています。愛知県がんセンターの臨床試験分野における豊富な実績・知見と、NTTグループのICT・データ連携技術を組み合わせることで、電子的な説明・同意取得や症状報告のデジタル化、電子カルテシステムとEDC※2のデータ連携を進め、DCT(Decentralized Clinical Trial:分散型臨床試験)など先進的な臨床試験DXモデルの社会実装をめざします。
さらに、オンライン診療システムの活用により、愛知県がんセンターと地域病院やクリニックをつなぎ、患者の診察状況や治療方針の相談・共有を遠隔で行える環境を整備します。これにより、地域間の医療格差を縮小し、患者がどこに住んでいても最先端のがん治療にアクセスできる体制をめざします。
(写真左から)
NTT株式会社 執行役員 爪長 美菜子氏
愛知県がんセンター 薬物療法部 医長 谷口 浩也先生
近年、医療現場において、紙ベースで運用されていることや、複数システムが分断されていることによる業務負担や低い症例集積性が原因となり、新薬開発における治験期間の長期化やコストの増大、患者の治験参加機会の地域格差、医療従事者の業務負担増といった課題が顕在化しています。特に日本では、海外で承認された薬剤が国内で利用可能となるまでに時間を要する「ドラッグ・ラグ」や、治験そのものが実施されない「ドラッグ・ロス」が社会問題となっています。また、病院間で治験や治療方法を共有できていないことにより、患者が最先端の治療にアクセスできない状況が発生しています。このような背景から、デジタルを活用した臨床試験のDX化が求められています。
両者はこの度、患者中心のモデルを社会実装することで、誰もが居住地にかかわらず最先端の治療へアクセスしやすくなる環境づくりを通じて、ドラッグラグ・ロスの解消と地域医療の発展・医療格差の是正に貢献します。
本取り組みにより、以下のような価値を提供します。
図:NTTと愛知県がんセンターがめざす姿
本協業では、愛知県がんセンターに以下のNTTグループのデジタルソリューションを導入し治験業務の効率化を図るとともに、遠隔診療を組み合わせた地域医療機関との連携モデルを構築します。
具体的には、2026年度上期までに、SmartPRO※3やPhambieLINQ※4を愛知県がんセンターおよび近隣の5医療機関に導入し、治験における医療機関連携を進めます。これにより、治験の効率化・早期化を図るとともに、医療現場の負担軽減を実現します。
両者は、治験領域にとどまらず、愛知県がんセンターと地域病院・クリニックをセキュアに接続し、治験情報以外の診療情報も安全に共有できる仕組み(医療機関連携のバーチャルネットワーク)を共同で構築します。これにより、地域医療機関とがん専門医療機関の連携を強化し、患者ががんと診断された初期段階から、治験や高度専門医療など適切な治療にアクセスできる環境を整備します。
2026年度下期以降には、臨床試験DXモデルの標準化と、近隣の医療機関および全国の医療機関へのDX支援を拡大させます。
医師主導臨床試験・治験および企業治験の双方の視点、ならびに医療現場の課題を踏まえた継続的な改善を両者で重ねることで、臨床試験・治験と診療をシームレスにつなぐ医療DXの実現を通じ、地域医療の質向上と持続可能な医療基盤の確立をめざします。
NTT株式会社 執行役員 爪長 美菜子氏のコメント
「NTTは、グループが有するデータ連携基盤やICT技術を活かし、臨床試験領域におけるDXの推進を加速していきます。今回の愛知県がんセンターとの取り組みは、患者中心の医療を支える新たなモデルケースとなるものです。今後も、先進的な臨床試験DXモデルを社会実装することで、医療現場の働きやすさや臨床試験・治療の質の向上と患者中心の医療実現に貢献してまいります。」
愛知県がんセンター 薬物療法部 医長 谷口 浩也先生のコメント
「私たちは、患者さんやご家族の“時間毒性(time toxicity)※7”や“経済毒性(financial toxicity)※8”を減らし、どこに住んでいても最新の臨床試験や専門的診療にアクセスできる社会を目指しています。今回のNTTとの協業は、その実現に向けた大きな次のステップです。当院で培ったオンライン治験の知見とNTTグループのICT技術を融合し、治験参加のハードルを下げ、地域医療機関とシームレスに連携できる新たな医療基盤構築を目指します。この取り組みを通じて、すべての患者さんが希望を持って最適な治療に臨める環境を実現してまいります。」
【NTT株式会社】
NTTは、1985年に日本電信電話公社の民営化によって設立された国内大手通信キャリアです。これまで、携帯電話/スマートフォン、光ブロードバンド、固定電話などを提供してきました。
臨床試験の分野では、ICTの先進技術を活用し、治験参加者募集から治験データ連携・管理、オンライン診療支援、医療機関支援までを一貫してサポートする治験・臨床試験サービスを提供しています。詳細については、https://group.ntt/jp/magazine/blog/ntt_med/をご覧ください。
【愛知県がんセンター】
愛知県がんセンターは1964年にがん研究会、国立がん研究センターに次いで設立され、我が国の3大comprehensive cancer center(病院と研究所を併設する総合がんセンター)の一つとして、60年余に渡って実績と信頼を築いて来ました。病院と研究所が併設されている強みを存分に活かし、科学的なエビデンスをもとに、現在ある最良の医療を提供するとともに、新しいエビデンスの創出、明日のより良い医療、がんにならないための予防法の創出に向け、まい進しています。詳細については、https://cancer-c.pref.aichi.jp/をご覧ください。
※1海外での既承認薬が日本国内での承認に時間を要すること、また、日本国内で開発が未着手のままで使用できない状況をさします。
※2EDC(Electronic Data Capture)とは、電子的に臨床データを収集すること、またそのシステムをさします。
※3SmartPROとは、NTTドコモビジネスが提供する臨床研究を支援するデータ収集サービス(ePRO機能とeConsent機能を含む)です。
※4PhambieLINQとは、NTTデータが開発した、医療機関と製薬企業をつなぐデータ連携プラットフォームです。医療機関と製薬企業のデータ連携を実現し、データの高品質化、治験プロセスの効率化に寄与します。
※5eConsentとは、パソコンやタブレット端末などを活用し、文書や動画、ビデオ通話といった方法で試験内容を説明し、電子署名などによって参加の同意を得ることをさします。
※6ePRO(electronic Patient-Reported Outcome)とは、スマートフォンなどを活用し電子的にPRO(治療経過や症状に関する患者の主観的評価)を収集すること、またはそのシステムをさします。
※7時間毒性とは、治療に伴う時間的な負担をさしており、採血、治療時間、薬剤の受け取り、通院時間、待合室での待ち時間、入院などが挙げられます。
※8経済毒性とは、治療に伴い患者とその家族に生じうる経済的な負担をさしており、治療費以外にも様々な費用が発生することで、患者のQOLや生存に影響を及ぼす可能性があるとされています。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
NTT株式会社
広報部門
e-mail: ntt-pr@ntt.com
愛知県がんセンター
運用部 経営戦略課 企画・経営グループ 村上
e-mail: k.murakami@aichi-cc.jp
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